翌日、世界文化遺産に指定されたチェスキー・クロムロフ へ
私の旅の最大の、否、究極の目的・楽しみは悠久の時の流れを経て変わらぬ姿を現出し、そこで後世の我々が対峙する時、タイムスリップして古へ思いを馳せるその瞬間に何にも代えがたい感動を得ることにあります。ですから、最初に選んだ地はイタリアでした。感動を得た典型的なものはコロッセオを初めとする遺跡の数々、フィレンツェの文化遺産、異次元とも思えるヴェネツィアであり、ポンペイの遺跡でした。極端な表現を許してもらうなら、正に「感動の余り、身が固まってしまう」ほどでした。
そんな意味からも、チェスキー・クロムロフも同様に私を感動で釘付けにしてくれました。単に見てくれの美しさを言っているのではありません。歩道に敷き詰められた個々の石を見ても、数百年も前の人々の作業風景を想像し、その上をいったいどんな思いを持った人々が行き交ったのか、等と思いを馳せると石一つにさえ愛おしさを覚えます。
そんな感動もやがて無残に打ち壊されてしまう事件が発生。ガイディング・レシーバーを持たされたまではいいのですが、それが時々音声が途切れたり、客の質問に答える添乗員の声が流れてきたり、添乗員の歩行速度が速すぎたり、という不満が鬱積していたようです。そんな不満を背景に、一人の男性が「俺が代表して注意してくる」と言い出しました。
いい歳のおじさんですから、弁えた対応をするものと疑いを抱きませんでした。ところが、多くの参加者の前で添乗員を罵倒し始めるではありませんか!
「個々の質問へ答えるならマイクを外せ!客を馬鹿にするな!」
「お前をこのツアーに参加させた上司は誰だ!お前に添乗員の資格はない!」等々。
上司の名前を知ってどうしようというのでしょう。40代前半と思われる添乗員にはベテランとしてのプライドもあるでしょう。愚問とも言える客の暴言に必死に耐えながら謝罪しているのですが、それでも件のおじさんは許しません。
客全員の共通の不満を代弁しているという勘違いの思い上がりに酔っているのかも知れません。ついに添乗員は口惜しさの余り背中を見せ、懸命に涙を堪えているようでした。「これはまずい!」と思った私、割って入ろうかとした一瞬、一番前に居た50代の女性が「ハイ!お仕舞い!楽しく行きましょう!」と仲裁に入ってくれました。結果として男性同士で左右するよりも女性が入ってくれたことが円満に事を進められたことに繋がったとホッとしました。添乗員を外れの方へ呼んで、そっと注意してあげればいいのに・・です。
それにしても件のおじさん、ビデオ・カメラを四六時中回し続け、他の客の迷惑等、意に介さない傍若無人ぶりにはほとほと情けないものを感じると同時に、私からすれば旅を楽しむ心が本当にあるのだろうか、と疑いたくなります。
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